転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜
126 このスキル、いつの間についたんだろう?
ドライの練習をするって決めた夕ご飯の時の事。
そう言えばお肉は村のみんなで分けるって言ってたけど、ほかの所はどうしてるんだろう?
そんな事が不意に頭に浮かんだんだよね。
小腸や大腸はともかくとして、心臓とか胃、それに食道とかも食べた記憶が無いんだよね。
これはボア系やラビット系の魔物は当然として、草原で僕が狩って来た鳥もお肉しか食べた覚えが無いんだ。
もしかして捨てちゃってる?
だとしたら大変だ。だって鳥だけじゃなく、ラビット系やボア系魔物の内臓も美味しいはずだもん。
そう思ってお父さんたちに、狩った魔物の内臓はどうしてるの? って聞いたんだよね。そしたら、
「ん? 捨ててるぞ。ってああ、ルディーンはその捨てた所が腐る事を心配してるのか」
なんて的外れな事を言いだしたんだ。だから、僕は違うよって教えてあげたんだ。
「お父さん。肉食の動物や魔物は他のお肉を無視して最初に食べるくらい内臓のお肉は美味しいんだよ。それを捨てちゃダメじゃないか!」
そしたら、それを聞いたお父さんとお母さんは物凄くびっくりしたんだ。
「内臓だぞ? あんなのが本当に美味しいのか?」
「そうよ、ルディーン。魔物や動物の内臓は焼いても変な匂いがするし、場所によっては排泄物が残ってて汚いのよ。そんなのを食べるなんて」
お父さんやお母さんからすると、内臓を食べるのはびっくりする様な事らしいんだ。
でもさ、僕の前世の記憶が言ってるんだ。内臓は美味しいって。だから、その内臓は全部埋めちゃったの? って聞いたんだよね。そしたら、
「量が量だけに、捨てる穴もまだ掘れて無いんだ。しかたがないから袋に入れておいてあるぞ」
って答えが帰って来たから、まだ捨てて無いって言う内臓を見せてもらう事になったんだ。
「この袋って、場所ごとに別けて入れてるの?」
「ああ。同じように捨てる部位でも排泄物があるところは肥料になるからな。その部位は枯れ草と一緒に燃やして土に混ぜた物を畑に撒けるようにって、別けてあるんだ」
お父さんが言うには、なんと大腸の部分はちゃんと別けて取ってあるみたい。他の内臓は捨てちゃうけど、そこだけは普段から穴に埋めずにちゃんととって置くんだってさ。
でも、これがよかったんだよね。だって、もし混ざってたらいくら草食のラビット系だって言っても、多分匂いが移って全部が食べられなくなってたと思うもん。
それを聞いた僕は、後で捨てる為に纏めてあるって言う内蔵が置いてある場所に連れてってもらったんだ。
「流石魔物の内臓。お肉と一緒で、まったく腐ってないや」
色んな所が混ざってるから匂いは大変な事になってるけど、鑑定解析で調べたらどこも腐ってなかったんだよね。それどころか、調べたら物凄く魔力が多く含まれてるからお肉なんかよりもっと長持ちするんだって。
普通は内臓の方が早く悪くなりそうなのに、魔物って不思議。
でもこれって、ちゃんと処理すれば保存食にもなるんじゃないかな? そう思った僕は、捨ててあった内臓の中から適当な部位を拾って、もう一度鑑定解析しようとしたんだ。
今の僕は料理の一般職がついてるから、もしかしたら一種類だけ取り出して鑑定解析すれば調理の仕方が解るかもしれないって思ったからね。
でも、その考えはいい方向に裏切られたんだ。
「あっ、内臓ってこうやったら食べられるんだ」
だってどうやって料理したらいいんだろうって思いながら袋から取り出したら、下処理の仕方が頭に浮かんだんだもん。
でもなんで?
そう思ってステータスを開いてみたら、いつの間にか一般職の料理でできる事に解体と下処理が増えてたんだよね。
ただね、解体処理は解るよ。この間お母さんに教えてもらったもん。でも下処理っていつの間についたんだろう?
もしかして、昼間になめす下処理としてお父さんが皮を煮てるのを手伝ったとき? でも、僕は乾かしただけだしなぁ。
う〜ん、もしかしたら僕が今まで気が付いてなかっただけで、他の調理をしてる時についてたのかも。
でもまぁそんな事、どうでもいいんだけどね。処理さえしちゃえば内臓って焼くだけでも美味しいもん。
目の前にある内臓の下処理のやり方が解った。今はそれだけでいいじゃないか。
と言う訳で仕分け開始。いくら処理の仕方が解るからってこんなにいっぱいある内臓を全部処理できないもん。だから鑑定解析でとっても美味しいって出てるやつだけを仕分ける事にしたんだ。
「お父さん。こういうやつを袋から出してこの袋に入れて」
とりあえず処理が大変そうな小腸とか肺みたいなところは無視して、塊になってる心臓や肝臓、それに胃をお父さんに見せて別けてもらう事にしたんだ。
「えっと、これが食べられる所なのか?」
「ううん。この袋に入ってる殆どが食べられるとこだと思うけど、こんなにいっぱいあるから処理するの大変でしょ。魔物のお肉は腐りにくいから、今は下処理がしやすいやつだけを別けてもらって、後は時間がある時にやっちゃおうって思うんだ。明日はロルフさんにお手紙を持っていかないとダメだからね」
「そうなのか。でも、わざわざそこまでして食べないといけない物なのか? 臭いし、肉より美味しくないんだろ?」
「それがねぇ、鑑定解析したらとっても美味しいって出たんだよ。それにお肉より魔力を多く含んでるから腐りにくいんだって」
本当は小腸が一番美味しいって出てるんだけど、その分下処理が大変なんだよね。だから今は放置。
僕の頭に浮かんだ内容によると、ラビット系は草食だから比較的処理が楽らしいんだよね。だから、とりあえず内臓の中でも処理のしやすいところだけ先にやってそれを焼いて食べれば、お父さんたちも内蔵が美味しいって解ってくれると思うんだ。
そしたら処理が大変な小腸とかも、面倒がらずにやってくれると思うからね。
「それは以外だな。で、その下処理ってのはどうやるんだ?」
「あのねぇ、内臓ってぬるぬるしてるでしょ? だからお塩を揉みこんでそれを洗い流すっていうのを何回かやって、きれいにすればいいみたい」
この方法だとお塩がいっぱいいるけど今なら獲ってきた一角ウサギの小さい魔石がかなりの数あるし、そのうちの一個を創造魔法でお塩にすれば獲ってきた分の内臓全部処理しても十分足りると思うんだ。
それを話したらじゃあ早速やってみるかって事になったんだけど、
「ルディーン。あなたは明日イーノックカウに行かなきゃいけないんでしょ? ならその下処理と言うのはお父さんとお母さんがやっておくから、あなたは寝なさい」
って言われちゃった。
そう言えば夕ご飯を食べてからかなりの時間が経ってるもんね。
と言う訳で僕はライトの魔法で明かりを付けると、いつも寝てる部屋へ帰ってベッドの中へ。取り出した内臓は、お父さんとお母さんが処理してくれることになったんだ。
そして次の日の朝。
「うん。確かにこれはうまいな」
「肝臓のところはちょっと癖があるけど胃とか心臓はコリコリしてるし噛むと旨みが出てくるから、私は他のお肉より好きかも」
下処理がすんだ内臓に塩だけ振って焼いたのが朝ごはんに出てきたんだ。そしたら案の定とっても美味しかった。
それを食べたお父さんもお母さん、それにお兄ちゃんやお姉ちゃんたちもにっこり。これなら手間をかけても、捨てないで食べた方がいいねって話しになったんだ。
そうだ! 元々お土産に取ってきたラビットのお肉を持ってくつもりだったし、ロルフさんたちにも持っていってあげよっかな。
こんなに美味しいんだもん。きっと喜んでくれるよね。
因みに下処理がついたのはルディーン君の想像通り昼間の皮を処理していた時なのですが、別にあれだけでついた訳ではありません。
今までに行った獲れた魔物の血抜きや、パンケーキを作るためにと砂糖を細かく砕くなどをしているうちに経験がたまってこの技術が身についたと言う訳です。
加護つきはジョブの習得には有利に働きますが、それに伴う技術には関係が無いので積み重ねが必要なのです。